長期譲渡所得と短期譲渡所得
2025/03/22作成
不動産などの資産を売却する際にとても重要です。「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」は、資産を保有していた期間(所有期間)によって分かれるもので、それによって税率も大きく変わります。
■ 長期譲渡所得 vs 短期譲渡所得
分 類 | 所有期間 | 概 要 | 税 率(所得税+住民税) |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 短期間の所有での売却。投機的とみなされ、税率が高い。 | 約39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税) |
長期譲渡所得 | 5年超 | 長く保有した資産の売却。優遇税率が適用される。 | 約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税) |
■ 所有期間のカウント方法
- 譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていれば「長期」、**5年以下なら「短期」**となります。
- カウントは「取得日から譲渡した年の1月1日まで」です。
例:2019年7月1日に購入 → 2025年3月に売却
→ 所有期間は 2025年1月1日時点で5年未満 → 短期譲渡所得
■ 譲渡所得の計算式
譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除(※条件付き)
その後、長期 or 短期に応じた税率が適用されます。
■ 特別控除の例(長期譲渡所得で適用されやすい)
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 10年超保有の軽減税率の特例
- 買換え特例(一定条件で課税繰り延べ)
■ 補足
- 不動産の**「登記日」ではなく実際の引渡日(契約成立日)**が取得日とされます。
- 相続や贈与で取得した場合は、元の所有者の取得日・取得価格を引き継ぐルールがあります(取得費引継ぎ制度)。
小規模宅地等の特例
2025/3/23作成
「小規模宅地等の特例(しょうきぼたくちとうのとくれい)」について、相続税の節税においてとても重要な制度ですので、分かりやすくご説明します。
■小規模宅地等の特例とは?
相続した土地が「自宅」や「事業に使っていた土地」である場合、一定の条件を満たせば、相続税の課税評価額を最大80%減額できる特例制度です。
これは、残された家族が住み続けたり、事業を継続したりするのに過大な税負担がかからないようにするための措置です。
■どれくらい減額されるの?
区分 | 減額割合 | 限度面積 |
---|---|---|
自宅用地(特定居住用宅地等) | 80%減額 | 330㎡まで |
事業用地(特定事業用宅地等) | 80%減額 | 400㎡まで |
貸付事業用地 | 50%減額 | 200㎡まで(※条件厳しめ) |
■対象になる土地の種類
① 特定居住用宅地等(自宅)
- 被相続人が住んでいた土地
- 配偶者、同居していた子などが引き続き居住する場合に対象
② 特定事業用宅地等(事業)
- 被相続人が事業に使っていた土地
- 相続人が事業を引き継ぐ場合に対象
③ 貸付事業用宅地等(賃貸)
- 被相続人がアパートや駐車場などに貸していた土地
- 相続人が貸付事業を継続する場合(※要件厳しめ)
■具体例
たとえば、自宅の敷地評価額が6,000万円で、面積が330㎡以内の場合:
◆ 評価額 6,000万円 ×(1 - 0.8)= 1,200万円に圧縮!
→ この1,200万円に対して相続税がかかるため、大幅に節税できます。
■適用を受けるための主な要件
土地の種類 | 主な要件(例) |
---|---|
自宅用地 | 相続人が配偶者 or 同居していた子などで、その後も住み続ける |
事業用地 | 相続人が事業を継続する意思と実態がある |
貸付用地 | 相続開始前3年以内に貸付を開始したものは原則対象外 など |
※配偶者が取得する場合は、無条件で適用可能(例:自宅)
■手続き・申告について
この特例を使うには、相続税の申告書に特例の適用を申請する必要があります。
忘れると適用できないので要注意です!
■まとめ
ポイント | 内容 |
---|---|
制度名 | 小規模宅地等の特例 |
メリット | 土地の相続税評価額が最大80%減額 |
対象 | 自宅、事業用、貸付用の土地(条件あり) |
要件 | 居住・事業継続、面積制限など |
手続き | 相続税申告で適用申請が必要 |
◆参考資料:国税庁「小規模宅地等についての課税価格の計算の特例」
登録免許税とは
20252/3/20作成
「登録免許税(とうろくめんきょぜい)」とは、登記や登録を行う際に課される国税の一つで、主に不動産の登記や会社の設立・変更などの登記をする際に必要になります。(2025年3月22日作成)
■ 登録免許税の概要
項目 | 内容 |
---|---|
税の種類 | 国税(申告納税方式ではなく、登記時に自動的に課される) |
管轄 | 法務局などの登記機関での手続き時に納付 |
納付方法 | 登記申請時に収入印紙などで納付 |
課税対象 | 不動産登記、法人登記、船舶・航空機の登録など |
■ 具体的な例(主なもの)
登録内容 | 税率(原則) | 備考 |
---|---|---|
不動産の所有権移転登記 | 固定資産評価額の2.0% | 相続:0.4%、贈与:2.0% |
会社設立(株式会社) | 資本金の0.7%(最低15万円) | 合同会社は6万円(定額) |
不動産の抵当権設定登記 | 債権金額の0.4% | 住宅ローンなど |
※上記税率は法改正により変更される場合があります。
■ 減税・免税措置
住宅取得時や特定の条件を満たす場合、軽減税率や非課税措置が適用されることもあります。
例:
- 新築住宅の所有権保存登記 → 0.15%(軽減措置あり)
- 特定の法人設立支援制度を利用した場合の登録免許税の減免 など
ご自身のケースに当てはめた試算もできますので、気になる場合は具体的な内容を教えてください。
参考:国税庁 登録免許税の概要
国税庁 NO.7191 登録免許税の税額表をご参照ください
空家の3,000万円特別控除 耐震リフォームについて
空き家の3,000万円特別控除を使うには、一定の条件のもと、
売却前に耐震リフォームをするか、建物を解体して土地として売却するという要件が含まれています。
✅ ポイント:売却前の「耐震改修」または「解体」が必須
これは、旧耐震基準の建物(昭和56年5月31日以前の建築)が多く老朽化しており、そのまま流通させると安全面で問題があるためです。
そのため、以下のいずれかをしなければ、3,000万円控除は使えません。
① 建物を残して売る場合
- 現行の耐震基準に適合するようにリフォーム(耐震改修)してから売却する。
② 建物を壊して土地として売る場合:
- 売却前に建物を解体して更地にする。
✅ 国税庁の公式記載(要約)
昭和56年5月31日以前に建築された建物であって、譲渡の時までにその建物を次のいずれかの方法で処理していること
・耐震基準に適合するように補強工事を行うこと
・除却(取り壊し)して土地のみを譲渡すること
※詳細は:国税庁|タックスアンサー No.3306
✅ 補足:耐震リフォームにかかる費用と手間
- 耐震リフォームには100万円〜200万円以上かかることが多く、手続きも煩雑です。
- そのため、実務では建物を解体して更地で売る方が簡単かつ確実というケースが多く見られます。
つまり、「解体 or 耐震リフォーム」は3,000万円特別控除を受けるための重要な要件の一つです。
売却を検討されている場合は、早めに相談して下さい。
譲渡所得に関わる購入時建物減価償却
2025/3/20作成
譲渡所得(たとえば不動産を売却したときの利益)を計算する際、**建物の取得費は「減価償却後の価額」**を用いる必要があります。つまり、売却するまでに行った減価償却費は、取得費から差し引くということです。
■ 譲渡所得の計算式(基本)
譲渡所得=譲渡価額(売却額)−(取得費+譲渡費用)譲渡所得
◆「取得費」には要注意!
建物の場合、取得費=建物の取得価格 − 減価償却費の合計 です。
■ 建物の減価償却費(譲渡所得用)の計算方法
✅ 基本の計算式
減価償却費=取得価額×償却率×経過年数(1年未満切上げ)
※ここでいう「償却率」は、所得税法上の定額法の償却率を使用します(税法で定められた耐用年数に基づく)
■ 計算例
<例>木造住宅(住宅用)
取得価額 1,000万円、所有期間 8年、償却率 0.031(=耐用年数22年)
減価償却費=1,000万円×0.031×8年=248万円減価償却費
取得費=1,000万円−248万円=752万円(←これを譲渡所得の計算に使う)
■ よくある注意点
ポイント | 説明 |
---|---|
減価償却は「していなくても計算される」 | 実際に経費計上していなくても、自動的に減価償却されたものとみなされます(みなし償却) |
土地部分は減価償却しない | 取得費を土地と建物に按分する必要があります |
相続・贈与で取得した場合 | 前所有者の取得価額・取得時期を引き継ぐケースが多いです |
■ 土地と建物の按分方法(参考)
不動産の売買契約書に土地・建物の内訳が書かれていれば、それに従って按分します。なければ、固定資産税評価額などを元に按分します。
より正確な試算が必要であれば、以下の情報があると計算がしやすいです:
- 建物の取得年月・価格
- 建物の構造(木造・RCなど)
- 売却時期
- 土地と建物の割合(または固定資産税評価額)