譲渡所得に関わる購入時建物減価償却
2025/3/20作成
譲渡所得(たとえば不動産を売却したときの利益)を計算する際、建物の取得費は「減価償却後の価額」を用いる必要があります。つまり、売却するまでに行った減価償却費は、取得費から差し引くということです。
■ 譲渡所得の計算式(基本)
譲渡所得=譲渡価額(売却額)−(取得費+譲渡費用)譲渡所得
◆「取得費」には要注意!
建物の場合、取得費=建物の取得価格 − 減価償却費の合計 です。
■ 建物の減価償却費(譲渡所得用)の計算方法
✅ 基本の計算式
減価償却費=取得価額×償却率×経過年数(1年未満切上げ)
※ここでいう「償却率」は、所得税法上の定額法の償却率を使用します(税法で定められた耐用年数に基づく)
■ 計算例
<例>木造住宅(住宅用)
取得価額 1,000万円、所有期間 8年、償却率 0.031(=耐用年数22年)
減価償却費=1,000万円×0.031×8年=248万円減価償却費
取得費=1,000万円−248万円=752万円(←これを譲渡所得の計算に使う)
■よくある注意点
ポイント | 説明 |
---|---|
減価償却は「していなくても計算される」 | 実際に経費計上していなくても、自動的に減価償却されたものとみなされます(みなし償却) |
土地部分は減価償却しない | 取得費を土地と建物に按分する必要があります |
相続・贈与で取得した場合 | 前所有者の取得価額・取得時期を引き継ぐケースが多いです |
■ 土地と建物の按分方法(参考)
不動産の売買契約書に土地・建物の内訳が書かれていれば、それに従って按分します。なければ、固定資産税評価額などを元に按分します。
より正確な試算が必要であれば、以下の情報があると計算がしやすいです:
- 建物の取得年月・価格
- 建物の構造(木造・RCなど)
- 売却時期
- 土地と建物の割合(または固定資産税評価額)
相続税の基礎控除、配偶者特別控除について
相続税の「基礎控除」と「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」について、ご説明します。
■相続税の基礎控除とは?
相続税には「基礎控除」という制度があり、相続財産がこの金額以下であれば、相続税はかかりません。
■基礎控除の計算式
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
<例>
法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合
3,000万円 +(600万円 × 3)= 4,800万円
→ 4,800万円までの遺産には相続税はかかりません。
■配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは?
配偶者が相続する場合、特別に大きな控除(非課税枠)があります。これを「配偶者の税額軽減」といいます。
■非課税限度額
配偶者が相続する財産については、以下のどちらか大きい方まで非課税になります。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分までの金額
つまり、配偶者が多くの財産を相続しても、一定の範囲なら相続税がかからないという制度です。
■例
配偶者と子ども1人が相続人 → 配偶者の法定相続分は 1/2
遺産が3億円の場合 → 配偶者が1億5,000万円を相続 → 非課税(法定相続分以下)
■注意点
- 配偶者控除を受けるには相続税の申告が必要です(ゼロでも申告しないと控除は適用されません)。
- 配偶者控除があるとはいえ、将来的な二次相続(たとえば配偶者が亡くなった後の相続)を考慮することも大切です。
国税庁
「NO4158 配偶者の税額の軽減」 ご参照ください。
準確定申告を知っていますか
「準確定申告」について、ご説明します。
■準確定申告とは?
「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」とは、亡くなった人(被相続人)が生きていた期間の所得について行う確定申告のことです。
通常の確定申告は本人が行いますが、亡くなった場合には、相続人が代わりに行う必要があります。これが「準確定申告」です。
■なぜ必要なの?
亡くなった方が、亡くなる年の1月1日から死亡日までに得た収入(給与所得・年金・事業所得など)があった場合、それに対する所得税や住民税を正しく申告・納税する必要があります。
■誰がやるの?
準確定申告は、相続人全員の連名で行います。
ただし、相続人のうちの1人が代表して提出することも可能です。
■提出期限は?
被相続人が亡くなった日から 4か月以内 に、税務署に提出しなければなりません。
例:4月15日に亡くなった場合 → 8月15日が提出期限
■提出先は?
被相続人の住所地を管轄する税務署です。
■必要な書類:
- 準確定申告書(確定申告書の様式を使用)
- 被相続人の源泉徴収票や医療費控除の明細など
- 相続人の署名または「付表(相続人の一覧)」の提出
■申告が必要なケース例:
- 亡くなった方が給与所得者で、年末調整されていない
- 年金収入が400万円を超えていた
- 医療費控除や雑損控除を受ける予定だった
- 不動産や株の譲渡益があった
■注意点
- 準確定申告によって還付金が出る場合もあります。過払いの税金は、相続人が受け取れます。
- 準確定申告とは別に、相続税の申告・納付(原則として死亡後10か月以内)も必要です。